ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「一時間以上も入って、ふやけたんじゃないのか」
「確かに、指先とかしわしわになってた。もう、大丈夫だけど」

 少しぬるめの露天風呂に、半身浴のように浸かって、ぼうっと外を眺めて、今までの蒼佑との間に起こったこと――そして今夜のこと、など、あれこれ考えていたら、小一時間立っていて、自分でもびっくりしたのだった。

「でも、夕日はすごくきれいだった」
「うん……よかった。あれを見てもらいたかったんだ。まぁ、贅沢をいえば、俺も一緒に見たかったけど」
「お風呂で?」
「お風呂で」

 蒼佑は真面目にうなずいて、それから箸を置きビールの瓶を持ち上げた。

「グラス、空いてるよ」
「あ、ありがとう……」

 慌ててグラスを差し出して、ビールを受け取り、少しだけ口をつける。

(私が、明るいのは嫌だからって断ったの、ちょっと根に持ってそう……)

 葵の嫌がることは絶対にしないと言いつつも、蒼佑は一度こうと決めたら、何が何でもやり遂げる粘り強さがあるように思う。
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