ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
一歩一歩歩くだけで、心臓がバクバクと跳ねて、口から飛び出しそうになる。
だが逃げるわけにはいかない。
なにを言われても、葵は蒼佑と別れる気持ちは、まったくないのだから。
「じゃあ、サロンでお話ししましょうね」
姿を現した葵を見て、りか子は満足したようだ。
くるりと踵を返し、先に歩きだしてしまった。
「――はい」
サロンというのは、外商部にある顧客専用のスペースのことだ。りか子レベルになれば、売り場に行かずとも売り場のモノはなんでもここに運ばれて、その中からゆっくり商品を選ぶことが出来る部屋も、別に用意されている。
葵はりか子と連れ立って、外商サロンの特別室へと足を踏み入れた。
何度かフルオーダーのスーツを運びに来たことはあるが、腰を下ろしたことは一度もない。上等な革張りのソファーに座ると、外商部の事務員が紅茶と焼き菓子を持ってきて、すぐに出て行ってしまった。
「――単刀直入に言うわね」
りか子は紅茶にそっと口をつけて、淡く微笑む。
「はい」