ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 だがりか子はそうは思わないのだ。
 葵がどれだけ言葉を尽くして説明したところで、彼女にとって葵は『息子を奪う女』でしかないのだから。

「――弟のナツメ君だったかしら。とっても人気があるモデルなんですってね。大きくなったわね」

 その瞬間、葵の肩が震える。

「はい。高校生になりました」

 ナツメはただの高校生ではない。モデル、タレントとして今売り出し中だ。
 そのナツメの芸能活動をどうこうすると、言いたいのだろうかと、葵は穿った見方をしてしまった。

 だが、そんな決定的なことを口にするほどりか子は愚かではないだろう。
 ただ、知っているぞとほのめかして、葵を疑心暗鬼にしたいだけだ。

(そう……わかってるけど……)

 自分のことはどう言われてもいいが、ナツメ――家族のことをほのめかされると、葵も泣きたくなる。

 ぎゅうっと膝の上でこぶしを握った瞬間――。コンコン、とドアがノックされた。

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