ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「お茶のお代わりをお持ちしました」

 長身のスーツの男がずかずかとテーブルに近づいてきて、りか子と葵の紅茶を新しいものに変える。そしてトレイを片手に、優雅に微笑んだ。

「――お久しぶりですね、おば様」
「えっ……あら!」

 男性が入ってきても完全に無視していたりか子が、顔を上げて、すっとんきょうな声を挙げた。

 うつむいていた葵も、顔を上げる。そして仰天してしまった。

 葵とりか子のテーブルの横に立っていたのは、グレーの三つ揃えを着こなした、精悍な美男子だった。さらさらとこぼれる黒髪に、少しだけ吊り上がった切れ長の瞳。甘さと怜悧な美貌が絶妙に入り混じった男が、この場のどんよりした重い空気もなんのその、ニコニコと笑って立っている。

(え……誰……でもどこかで見覚えが……)

「瑞樹さん……あなた、どうしてここに?」

 りか子は目をパチパチさせながら、慌てたようにソファーから立ち上がった。

 瑞樹――その名前を聞いて、葵はハッとした。
< 283 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop