ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「うん、助かったんだ……はぁ……」
葵はしばらくそうやって、何度も自分に言い聞かせながら、心を落ち着かせる。
本当に、息が詰まりそうな一時間だったが、いつまでもこうやってはいられない。
葵はゆるゆると立ち上がって、部屋を出る。葵が出てくるのを待っていたのか、紳士服の部長が慌てた様子で駆け寄ってきた。
「椎名さん、大丈夫だった?」
「大丈夫……だったと思いますけど、あの、南条さんが……南条さんでしたよね? なぜか彼がお茶を持ってきて……連れ出してくれたような……そんな感じで」
「ああ。南条ホールディングスの南条さんだよ。彼はもう本社に戻られたけど、南天のこともちょくちょく気にしてくれていてね……。以前、天野さんがオーダースーツを注文しに来てくれてるのは本当かって尋ねられて」
「そっ……天野さんが?」
あやうく蒼佑と言いそうになって、慌てて天野と言い直す。
「天野さんと南条さん、学生時代からの友人なんだって。それでたくさんご注文いただいていると伝えたことがあるんだけど……。たぶん、その流れで来てくれたような気もする。ここから本社は近いし」