ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 蒼佑が国内にいないから、やってきてけん制したのだろう。彼が帰ってくるまでに、葵のほうから身を引かせたいから――。

(私が蒼佑さんに今日のことを伝えれば、蒼佑さんはおばさまとフラットな気持ちで話せないかもしれない……本当に、仕事を辞めるって言い出しそう)

 葵は、一見おだやかに見える彼の心の奥の激しさを愛していたが、彼の世界はできるだけ大事にしたいと思っていた。すべてを捨てて自分を選んでほしいなどと、思ってはいない。
 かつて葵は蒼佑を失い、世界のすべてを失ったような感覚を覚えたのだ。
 りか子にだって、そんな思いはしてほしくない。時間がかかってもいいから、話し合いで解決できればと思っていた。

(電話やメールで、不安を煽るようなことはやめておこう)

 話すなら、彼が帰国してからだ。そう決心したと同時に、蒼佑から電話がかかってきた。

「あっ……」

 慌てて通話ボタンを押すと、『葵?』と、蒼佑の声が耳元から響く。

「うん……」
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