ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「なっちゃん……」

 旅行から戻った後、ナツメが蒼佑との仲を心配していたのは、こういうことだったのだ。そのことに気が付いて、葵の胸はギュウッとつかまれたように苦しくなった。

「ごめんね、なっちゃん……」

 ずっと黙っているのは、辛かっただろう。葵は申し訳なくなりながら、ナツメの端整な顔を見上げる。

「なんで謝るの! 葵ちゃんは悪くないでしょ!」

 そしてナツメはグッとまぶたを手の甲でこすった後、唇を噛みしめる。

「俺、見合いの場所、聞いたから」
「え?」
「んで、今から行って、あいつのことぶっ飛ばすから」
「ちょっ……」

 物騒なことを言い出したナツメに、葵はビクッと体を震わせた。

「だめだよ、そんなの……!」
「いいよ、殴らなきゃ収まらないよ!」

 そしてナツメは、ふうっと息を吐いて、葵の手を握ると、階段をどんどん降りていく。華奢な葵は、引きずられるように階下まで降り、フロアを横断する。

(どうしよう……!)

 今、ナツメは完全に頭に血が上っている。いくら止めようとしても、葵の力では押さえられない。
< 292 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop