ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「なっちゃん、待って……」
だが次の瞬間――。
「あらあら、まぁまぁ……」
すっと、金髪の長身の男がナツメの前に立ちはだかり、笑顔でナツメの肩に両手を置き、押しとどめた。それは化粧品カウンターの中から出てきた、渉だった。
「あっ……津田さん!」
「弟君。なにがあったのかわからないけど、落ち着いて。あなたすごーくお姉さんを困らせてるわよ。わかる?」
その瞬間、ナツメはぐっと息を飲む。
「まぁ、とりあえず座って」
そして渉はさっと、CC化粧品のカウンターの椅子を引いて、華麗な手さばきでナツメと、葵を座らせた。
だが葵も、そしてナツメも、渉になんと言っていいか、わからない。ふたりして黙り込んでいると、渉はさっとリップとブラシを手元から取り出して、にっこりと微笑んだ。
「葵、リップがとれてるわよ」
「あ……はい」
こんなことをしている場合ではないのだが――葵はうなずいて、渉に任せることにした。
唇の上をブラシが移動する。ゆっくり、ゆっくり、丁寧に。
輪郭をぼかし、なじませて、軽く指先でぽんぽんと押さえる。
「――きれいだな」
それをじっと見ていたナツメが、ぽつりとつぶやいた。