ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
ずっと守らなければと思っていたが、葵だってナツメに守られているのだ。
(なっちゃんが弟で、本当によかった)
状況はまったくよくないが、そんなことを思う葵である。
十分も経たないうちに、タクシーはホテルの前に到着した。支払いを済ませて、ふたりでロビーに入る。
「上の料亭で見合いしてるらしいから、とりあえずラウンジに行こうか」
「う、うん……」
ナツメの先導でとりあえずラウンジでコーヒーを飲むことにした。
ドクン、ドクンと、心臓が跳ねる。
いったいどんな顔をしていいか、葵はわからない。
蒼佑の気持ちを疑っているわけではないが、お見合い相手の女性がものすごく素敵な人で、蒼佑の気持ちが揺らいだら――などと考えてしまい、落ち着かない。
りか子に『あなたは何も持っていない』と言われたことなどを思いだして、苦しくなる。
いっそ身を引いた方が楽になれるのではと、心にもないことを考えてしまい、慌てて両手で自分の頬を叩いて、反省する。
(私、いま、百面相みたいになってるだろうな……)
葵は深くため息を吐いて、両手で顔を覆った。