ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
恋人がいるというのは、ものすごくいい案だ。むしろ今からでも積極的に採用したい。だが今さら、蒼佑に恋人がいると言ったところで、信じてもらえないだろう。なぜ最初に言わないのだと、嘘がばれるに決まっている。
「はぁ……」
気落ちした葵を見て、渉が口を挟んだ。
「なに、落ち込んでるの。若くてきれいなんだから、今からでも作ればいいじゃないの」
「作ればいいって、別にきれいでもないし……いや、そんな簡単に言わないでください……。っていうかそもそも私、彼氏なんか欲しくないし、作りたくないし、今後もひとりでいいんです」
そこはとても大事なところだ。念を押すように言い、葵は唇をかみしめる。
「ああ、そう……うーん」
渉は箸を持ったまま、目線を上に上げて、少し考え込む。
「じゃあ、あたしはどうかしら?」
「――はい?」
覆っていた手のひらを外して、顔を上げると、
「偽装彼氏に、立候補しようかしら」
ものすごく面白そうにニヤニヤと笑っている、渉と目が合った。