ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
まさかの偽装彼氏発言に、葵は目を丸くした。
「――やっぱり、面白がってますよね?」
「がってるわよ。超楽しそうじゃない」
渉はうふふと笑いながら、アジフライを丁寧に箸で切り分け、口に運ぶ。
(彼氏って……津田さんを?)
葵はモグモグと丁寧に咀嚼する渉の横顔を見つめる。
背が高くスマートで、おしゃれな渉だが、いつもこの調子でしゃべるので、異性として、まったくピンと来ない。
渉は本気で言っているのだろうか。葵は困惑してしまった。
「冗談ですよね」
「あたしはやってもいいと思ってるけど?」
「ほんとに?」
「本当よ」
そして渉は、紙ナプキンで軽く口元を押さえた後、隣の葵の顔を覗き込んできた。
「っていうか、あんたがそんな落ち込んでるの、珍しいじゃない。友人として助けてあげたいなってそれだけよ」
「津田さん……」