ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
だが、現実は違った。彼は葵の前から姿を消した。
さよならの一言すら告げずに――。
自分はあくまでも政略結婚の道具で、祖父という後ろ盾がなければ、彼の妻として認めてもらえる存在ではなかったのだ。
(恋は盲目というけれど、本当にそうだったんだ……)
胸の真ん中あたりが、ぎゅうっとつかまれたように痛くなる。
蒼佑に再会してから十日ほど経つが、最近食欲がすっかり落ちてしまった。
朝はナツメが見張っているので、なんとか口に押し込んでいるが、量は半分以下だ。不健康極まりない。
(ああ……早く楽になりたい)
葵は誰にも聞かれないよう、そっとため息を吐いた。
採寸が終わって、お見送りになる。
今回は自分以外にも人目があるので、葵は一番後ろに並んで、丁寧に頭を下げるだけで済んだ。