Happy Birthday~大切な人に贈る言葉~
次の日。授業が終わって部室に行くと葵さんが待っていた。
「あんたさ昨日、言ったこと忘れたわけ?」
「昨日?」
昨日、言ったという言葉が私には分からなかった。
葵さんがイライラしたように言う。
「圭太くんに近づかないで!て昨日、私、忠告したよね?もう忘れたの?」
「あっ‥ごめん。昨日は、それどころじゃなかったから。」
「‥とか言ってさ、わざわざアウトのボールを取りに行ったのも圭太くんの気をひくために、わざとやったんじゃないの?」
「それは、違う!!」
思ってるよりも大きな声が出た。
「じゃあ、何?」
「それは‥ただ勝ちたいて思っただけ。星野さんに勝ちたいて思ったから。ただ、その一心で‥。」
「あんたのそういうとこ、本当にムカツク。」
「えっ!?」
私は思わず、葵さんを見る。
「そうやって、真面目ですアピールするから腹が立つんだよ!別に私たちは楽しく、やればそれでいいの!あんたみたいな真面目な奴がいると楽しくなくなるんだよ!」
「‥‥‥‥。」
私が何も言い返せずにいると、葵さんが耳元で言った。
「あんたみたいな弱い奴はテニスなんかやめろよ。邪魔なんだよ。どうせ、男目当てなんだろう?あんたみたいな、地味な奴は男に振り向いてもらえるはずなんてないから。それに‥」
一拍おいて彼女は言う。
「手当てができるぐらいで調子に乗んなよ。調子に乗ってバカみたい。あんたなんかに夢は叶わないから。どれだけ頑張ってもあんたには無理。」
それがとどめの一言だった。
気がつくと私は部室を飛び出していた。
一番、聞きたくなかった言葉だ。
何もかも否定された。テニスも勉強も。
曲がり角を曲がったとき、誰かとぶつかってしまった。
「す‥すみません。」
「えっ?久川さん、どうしたの?」
見ると圭太くんだった。
「圭太くん‥。‥っ‥。」
私は名前で呼んでしまったことを後悔する。
「い‥今、俺の名前‥」
「失礼します!」
私は立ち去ろうとした‥が。
「ま‥待って!!」
圭太くんが私の手首をつかんでいた。
私の目からはずっと我慢していた涙が溢れだしていた。