センチメンタル


 彼はそう言って、ベンチにもたれかかった。外された視線を追って、私は園内で楽しむ色んな人達を見る。小さい子供を連れた家族、手を繋いで歩くカップル、一緒に来たはいいけれど、見ているだけの年配の人々。

 ・・・私たちって、今、人から見たらどういう風に見えるんだろう・・・・。

 お腹の中がふいに何もなくなったような感覚になった。乗り物酔いで消えていた緊張がまた戻ってくる。そわそわしそうで、ふわふわと浮きそうで、思わず右手で左手を強く握る。汗が出てきたのを感じた。・・・こらこら、私ったら何を考えてるのよ。

 しばらく黙ったままで座っていたけれど、その内に武田君は前を見たままでポツリポツリと話し出した。

 あのさー、って、静かな声で。

「文化祭ってどうだった?楽しめた?」

「え?文化祭・・・うん、まあ、それなりに楽しめたよ」

「終わるとき、泣いた?」

「え、いやいや、泣いてない。そこまでは、私はね」

 何故急に文化祭のことなのだ。私はちょっと驚いたけれど、微妙な空気のままで二人で黙っているなんてよりは絶対いい。だからすぐに話に乗った。

「俺なんか集団で物事をするのが苦手なのかも・・・。楽しくないわけではないんだけど、なんかこう、一歩引いた目で見てしまってるよなって自分で思うんだ。皆がわーって盛り上がってさ、女子なんか泣いたりして、男子も大声だして騒いでるのを、何か自分だけ冷静に見てるような気になるんだよね」

「ふーん・・・。まあ私も凄く感動したりとか、やたらとこれで最後だ~とかは思ったりしないから・・・何となくなら言ってることわかるよ」


< 11 / 16 >

この作品をシェア

pagetop