センチメンタル
だから私は楽しんでいた。
やっぱり緊張していて、会話を続けるにはどうしたら良いのだ!などと苦しむ瞬間もあったけれど、武田君は無言でいる時にも雰囲気の悪い男の子ではなかった。
口元が笑っている。黙っていても、瞳が優しい光を持っている。そんな男子だった。
いやぁ、知らなかったなぁ~、君、実に感じの良い人ではないか!そんなことを、私はこっそりと心の中で思った。クラスでも特に目立つ生徒じゃなかったから、こんなことでもなければ気付けたかはわからない。
久しぶりにジェットコースターに乗り、叫ぶ。お互いに乗っている間になにかと話が出来るような穏やかな乗り物は慎重に避けて、とにかく絶叫マシンを優先して乗りまくった。
だからその間は良かったのだ。
お昼を何とかしなくてはならないという問題に直面した時にも、色んなものを歩きながらつまむということで二人で面と向かって食べなくてはならない状況は上手に回避したのだし。
だけど―――――――――――
「あ、待って。俺喉が渇いたから」
そう言って武田君が飲み物を買いに行った時、疲れてベンチに座っていた私に、ついでにと飲み物を買ってきてくれたのだ。
「ほら、これどうぞ」
「え?買ってきてくれたの?」
うん、と言いながら、武田君はニッと笑う。私は受け取る前にと慌てて財布を出そうとした。
「お金はいいよ。ついでだったし、そんな高いもんじゃないし」
「うわあ、ありがとう~」