センチメンタル


 男の子にジュースを奢られてしまった!そんな経験はちっともなかった私はちょっと照れつつも嬉しく、笑顔で両手で受け取って・・・一瞬、真顔になってしまった。

 両手の中の大きなカップで揺れるその液体は緑色をしていて、微かに発砲している。

 あ。と心の中で思った。

 これ・・・メロンソーダってやつでは。

 ・・・炭酸、私飲めないんだけど・・・。

 だけどまた、すぐに私は笑顔を作る。だって折角買ってきてくれたんだもん。気を使ってくれたわけだし。大体一気飲みする必要なんてないんだから、ゆっくりでもちゃんと飲まなきゃ。もしかしたら美味しいかも。もしかしたら、気に入るかも!

 私はそう思って、喉を刺激する炭酸に目を瞬かせながら少しずつストローで飲んでいった。・・・甘い。そんでもって、喉が、痛い・・・。

「あー、やっぱり炭酸だよなー、すんげー美味しい」

 そう言いながら武田君は、本当に美味しそうに飲んでいく。好きなんだなあ、炭酸が。喉をのけぞらせて飲む武田君の姿を、私はついぼけっと見詰めてしまっていた。

 お昼の太陽が彼の向こう側に見えていて、まだ線は細いけれどくっきりとした喉仏を強調する。

 私にはない、それが。

 うわあ、男の子なんだなあって、じっくりと思ってしまった。


 かなり悪戦苦闘したけれど、それを何とか悟られないようにして飲み終えて、再び絶叫系に挑戦したのだ。だけどそれは良い考えではなかったらしい。

 ぐるんぐるんと回転し、何度も宙返りをするコースター。やはり無理に苦手な甘い炭酸飲料を飲んだのがたたったようで、私はなんと完全に乗り物酔いになってしまったのだった。


< 8 / 16 >

この作品をシェア

pagetop