センチメンタル
男の子にジュースを奢られてしまった!そんな経験はちっともなかった私はちょっと照れつつも嬉しく、笑顔で両手で受け取って・・・一瞬、真顔になってしまった。
両手の中の大きなカップで揺れるその液体は緑色をしていて、微かに発砲している。
あ。と心の中で思った。
これ・・・メロンソーダってやつでは。
・・・炭酸、私飲めないんだけど・・・。
だけどまた、すぐに私は笑顔を作る。だって折角買ってきてくれたんだもん。気を使ってくれたわけだし。大体一気飲みする必要なんてないんだから、ゆっくりでもちゃんと飲まなきゃ。もしかしたら美味しいかも。もしかしたら、気に入るかも!
私はそう思って、喉を刺激する炭酸に目を瞬かせながら少しずつストローで飲んでいった。・・・甘い。そんでもって、喉が、痛い・・・。
「あー、やっぱり炭酸だよなー、すんげー美味しい」
そう言いながら武田君は、本当に美味しそうに飲んでいく。好きなんだなあ、炭酸が。喉をのけぞらせて飲む武田君の姿を、私はついぼけっと見詰めてしまっていた。
お昼の太陽が彼の向こう側に見えていて、まだ線は細いけれどくっきりとした喉仏を強調する。
私にはない、それが。
うわあ、男の子なんだなあって、じっくりと思ってしまった。
かなり悪戦苦闘したけれど、それを何とか悟られないようにして飲み終えて、再び絶叫系に挑戦したのだ。だけどそれは良い考えではなかったらしい。
ぐるんぐるんと回転し、何度も宙返りをするコースター。やはり無理に苦手な甘い炭酸飲料を飲んだのがたたったようで、私はなんと完全に乗り物酔いになってしまったのだった。