センチメンタル


 回転コースターに乗っている途中で胸や胃の辺りがムカムカとし始め、さっきまでは大口を開けて叫んでいたのを無理やりやめた。

 ぐぐっ・・・ちょっと待って・・・これは、これは、これは・・・・ヤバイ!

 あとは天地がひっくり返ろうが、全身に凄い勢いで風が吹きつけようが、全部どうでもよくなってとにかく早く終わってくれること、動かない地面に降り立つことだけを考えていた。

 やっと終わったコースターの折り場で、私は真っ青だったらしい。脂汗も酷かったはずだ。隣の席から振り返った武田君がぎょっとした顔を私を見詰めた。

「え、大丈夫・・・?」

 私は口元を片手で押さえ、おそらく三白眼になりながら首を振った。そして荷物をひっつかみ、そのままでだーっと近くのトイレまで駆け出した。

 ・・・胃が、暴れてるんです・・・。

 ごめんよ、武田君。


 とにかくリバースしたことで、涙目になって全身は疲れたけれど、胃の不快感はなくなった。ああ・・・良かった、コースターにのっている間にこんなことにならなくて。てかもう十分恥かしいんだけど・・・うううう、どうして皆いないのよ~!友達がいれば、笑い話にも出来たものを~!

 顔を洗って気が済むまで口を灌ぎ、フラフラとトイレから出ると、心配顔で突っ立つ武田君がいた。眉毛が八の字に下がってしまっている。それを見たら、こんな時なのに笑えた。

「吐いた?間に合った?」

 私は何とかうん、と頷く。とにかく座ろうと彼がベンチを指差したので、ヨロヨロと後をついていった。


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