眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
いくら私が子供で、経験もなくて、駆け引きに縁のない生活だったとしても、眼鏡の向こうの瞳に穴が開くほど見つめられたら分かる。
鈍い私でも、その熱いまなざしがなんなのか分かる。
でもなんで?
面接には遅刻しそうだったし、書類やデータをまとめるのは慎重すぎて遅いし。
ちびでノロまで、子供っぽいのに。
なんでそんなに熱いまなざしで見つめてくるの。
パソコンの影に隠れようとしたら『駄目だよ』と言われた。
「ちゃんと見せて」
「な、なんでっ」
「可愛いから」
有無も言わさないきっぱりした言葉に面食らう。
こんな風に見てくる人なんて、私の今までの時間の中で居なかった。
だから苦しい。胸がどきどきして締め付けられる。
「止めてほしい?」
「は、はいっ」
「じゃあ今夜付き合って」
四の五の言わさないような、口調。
そんな口調じゃなくても、働きだしてからドラマの日は送ってくれたり食事に誘ってくれたりする。
ちゃんと22時のドラマに帰してくれる紳士っぷりだから信用できる。
「分かりました」