眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
「良かった」
私の承諾と同時に眞井さんが立ち上がる。
それが合図かのように会議室の扉が叩かれた。
「一人通して。他の三人は外で待たせていい」
夢から覚めるように、眼鏡を外した眞井さんの目は鋭くなる。
「あのう、私も見ていましょうか?」
「君が?」
「誰かに見られてたら、きつくなる表現を使うのためらうんじゃないかなって。社長、あとで落ち込むんじゃ、とか」
「ふ」
眼鏡をしていないときの眞井さんの笑顔は、少し悪代官みたいな、含み笑いで怪しい。マフィアのボスだと言われたら信じてしまいそうだ。
「問題ないよ。何年社長をしてると思ってるんだ」
言葉では突き放すのになぜか口元が微笑んでいる。
もたもたしているうちに、もう一度ノックされ私が飛び出した。
するとガチガチに緊張している新入社員が四人立っている。
「おひとりどうぞ。あとの三人は此方に」
急いで椅子を並べて壁の方へ誘導する。