眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
目を少し潤ませているけど、変わった様子はなかった。
二人目が少し緊張した様子で中へ入っていく。
「どうだった?」
「やべえ。やっぱ社長格好いいよな。細かい注意以外は何も怒られなかったよ」
他の新卒の人たちと感想を言い合うのを背中を向けて聞いてしまった。
崎田さんも眞井さんも、泣かせちゃうとか怖がらせちゃうとか大げさだ。
こっそり聞いてしまった話の中に『大学時代に起業したなんて格好いい』だの『〇〇という仕事を見て絶対入ろうと思ってた』とまるで就職面接みたい場になっていた。
私がどの企業にも受からなかった理由が分かる。こんな風に情熱的にアピールできるものがなかったし自信がなかったからだ。
たぶん同じ年齢ぐらいだろう彼らと私の間に線引きされた『派遣』と正社員の色は濃い。