眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
面接は一人10分程度で終わった。中に戻ると気難しい顔の眞井さんが窓の外を見ている。
「今年は誰も泣かなかったですね」
さっきの今で本音を言えば、まだ気持ちは動揺していた。
ばくばくと心臓が全身に広がったみたいに体を支配している。
「だが滅入るよ。怖がらないように説明するの」
「ふふ。きっと社長のその努力、皆に伝わっています」
「良いフォローをするじゃないか、秘書よ」
「は。有難きお言葉」
二人して真面目な顔でふざけながら会議室を出て上へ戻る。
「でも私が就職活動で失敗していた大学時代に会社作っちゃうなんて、社長はすごいですよね。尊敬します」
「……直球で本人によく言えるな」
眞井さんは少し照れたのか、悪態をつきつつまたエレベーターを先に押して入れてくれた。
「君こそ、素直で仕事も丁寧で、もっと自分を褒めていいと思う」
「ええ!? 私なんてまだまだのまだまだですよ!」
「謙遜だな」
「社長っ」