眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
仕事の後、連れていかれたのは隠れ家のようなBAR。ビルの中にあるのではなく、ビルとビルの間に一軒家のように建っていて看板もない上にカーテンも閉め切っていて、お店だとは到底気づかれない。
そこで梟が長い首輪に繋がれ、天井近くの木を自由に行き来し、ピンク色の大型ドールハウスからウサギが顔を出す。
少し離れたバーカウンターには背中に世界中から集めた珍しいお酒を並べ、得意げにフレアバーテンディングを披露してくれた。
おっとりした喋り方の、目元がやさしく常に笑顔で可愛い感じの男性だった。
『崎田の学生結婚した相手だ』と、眞井さんにざっくりな説明をうけて驚いた。
普段は実家の創業400年の酒造で社長さんをしているらしい。
「どうぞ。うさぎをモチーフにしたイチゴミルク。苺とカルアミルクを混ぜてるよ」
「か、可愛いっ ありがとうございます!」
「動物が怖がるから知り合いしか招待しないんだけどね、辰巳の彼女なら大歓迎だよ」
「ちがっ 違いますっつ」
「止めてくれ。逃げられるだろ」
眞井さんも友人の前だからか冗談を言い合って楽しそうだ。
「口説いてよさそうなら、こんなところじゃなくちゃんとした場所を用意する」