眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。

「こんな場所ってなんだよ。失礼だな」

 梟のクッションを投げつけられ、眞井さんはソファ席に移る。
そこで膝にウサギを乗せて、撫でだした。

眞井さんの可愛いもの好きは本当らしく、顔がやさしい。


「そろそろ気づいたみたいだし、全力で行こうかな」

「怖い怖い。逃げなさい、お嬢さん。あれは凶暴なクマだよ」

「クマっ」

ぷっと吹き出すと、眞井さんも笑う。

「お嬢さん、俺を忘れてますよ、てか」

「大きすぎて忘れねー」

バーカウンターをバンバン叩きながら笑う。怖いとか、格好いいと尊敬されている眞井社長を『クマ』と言えちゃうなんて、凄い。

「でも紳士な振りをしている奴が一番危険だよね」
「良い人ぶった狼の方が危険だろ」

ウサギを抱き上げて、お腹がびろーんとのびたのが可愛かったのか指先でお腹を触っている。

「私は、動物にも優しい人って信用できますっ」

意気込んでそういうと、ウサギから視線を逸らさずに眞井さんは静かに言う。

「いや、だからあまりお前は信用するなと何度も言ってるだろ」

「何でですか?」

首を傾げる私は、内心ドキドキしていた。気づいてるけれど、まだ知らないふり。
悪いことをしている気持ちになった。


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