眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。


 優しい崎田さんに、夕食もごちそうになりいつもより早く送ってもらった。
 私を送るためにお酒を飲まなかった眞井さんの優しさにも、とっくに気づいている。

「ではおやすみ。また明日」
「はい。ありがとうございましたっ」

窓を閉めて前を向くその横顔が、少し寂しい。
明日も会えるのに、なぜこんなにも切なくなるんだろう。


前は先に私が逸らしていた視線。今は、彼の方が先に横を向く。

ゆっくりじわじわと変わったのは、私の心。

ゆっくりゆっくり侵食されていくのは、彼の甘い言葉のせい。

毎日、どこかしらに散らばる甘い言葉を、日ごと寝る前にかき集めてドキドキしてしまう。

そんな自分がもどかしい。
けれど今一歩、夢の中みたいで信じられない。


ただ一つ、初めて会った日に貰ったハイヒールだけは夢から覚めずに靴箱の一番上に飾られている。



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