眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。



 その日、私は銀行に用事があり片野さんに頼んで半休を貰っていた。
 その報告も派遣会社の方にしてあったのだけれど、銀行の待合室で電話がかかってきて、秘書の派遣会社『queenBe』本社に呼ばれた。


 適性検査や書類作成時に来た会議室で、その時に担当してくれた山本さんという年配の女性が難しい顔をして私を見ていた。

「今日はAdorableに行って貴方の仕事態度等を秘書の片野さんに聞いてきました」
「えっ」

「うちは派遣先に紹介したら終わりではなく、そのあとのケアもするとお伝えしましたよね?」

 なぜかピリッとした冷たい言い方に何度もうなずく。

「あのう、私、何かしましたか?」

「片野さんからの評価は大変良かったです。慣れないながらも一生懸命頑張っていると、貴方の前向きな取り組みを評価していましたよ」

「そうですか」

 ほっと胸を撫でおろす。片野さんに比べたら全然、まだ仕事のスピードも気遣いもできていないけど、それでも片野さんに褒められると嬉しい。

「ですが、貴方」

 書類に目を通していた山本さんが書類を封筒に仕舞いながら、深いため息を吐く。

「なにか……?」
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