眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。

「貴方、眞井社長に送ってもらったり一緒に食事をしている、と聞きましたが本当ですか?」

「えっ」

 思わず目を泳がすと、山本さんの目がキッと吊り上がり思い切り睨まれた。

「何を考えてるんですか。秘書は社長のスケジュール管理や、会社全体のことを把握したり大事な役目ですよね。個人的に社長と仲良くなるために派遣秘書になったわけじゃないですよね?」

「ちがいますっ。そんなつもりないです」

「どちらにせよ、そのように浮ついた気持ちが他の課の女性社員の目に映り評判が良くないことはうちの会社のイメージ悪化にもなります」

「……申し訳ありませんでした」

「更新は自分から断ってください。こちらからまた別の派遣を用意します」

 義務的な業務連絡。機械と話しているのかと思うほど、冷たく言い放たれて、頭が真っ白になった。
 けれど本当のことだ。社長に送ってもらったり、BARに連れて行ってもらったり舞い上がっていた。

 浮かれて、仕事先の上司なのに恋した気分になっていた。

< 48 / 58 >

この作品をシェア

pagetop