秘密の糸Season1㊤
そして全ての撮影が終わり、ウチはエントランスを出た。


その時


ウチの前に黒の車が通った。


「あれ、武藤さん。」


そして車の窓から、須藤さんが顔を出した。


「須藤さん、お疲れ様です。」


「お疲れ様です、今帰りですか?」


「はい、電車なので…」


その時、近くから零士の声がした。


(うわ…最悪…。どうしよ…会いたくねえ…。)


「あの…。」


「はい?」


「良かったら、送りましょうか?」


「え?や、でも」


「零士さんに見つかったらヤバイんでしょ?それに女の子一人じゃ危ないし」


「!!」


「こんなオンボロで良かったらどうぞ!」


須藤さんはそう言って、さっきのあの笑顔を見せた。


(何か…ズルいな…)


「…じゃあ、お願いします。」


「はい!」


そしてウチは、助手席に座った。


「じゃ、行きましょうか。」

そう言って須藤さんは、ナビをセットし運転し始めた。
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