スノーフレークス
「高校卒業後の進路? えーと、私はまだよく考えていないわ。関東の方に帰りたいけど母さんのことも心配だし。特に興味のあることもないし、どんな学校に行きたいかもわからないなぁ」
 はたして、進学校に通う高校生の目的意識がこんなに低くていいのだろうか。
「氷室さんは?」
「私は県外の大学に行きたいな。だって私、この小さな町しか知らないんだもの。日向さんみたいに都会に住んでみたいよ。来年は受験だからそろそろ本気を出して勉強しないとね。うちは進学校だけど有名私立大学や国立大学の一期校に入るのは成績上位の生徒だからね」
 私は学校の廊下に貼り出された成績上位者のリストを思い出した。氷室さんも私と同様、ランキングの圏外にいたはずだ。
「私、期末テストの成績上位のランキングを見たけど、あそこに氷室さんの名前はなかったわ。もしかしてあなた、わざと手加減しているとか? その……学校で目立たないようにするために」
「そうよ。だって先生や同級生に注目されたら嫌だもの。でもそろそろ方針を変えることにするわ」
 そんな理由で勉強しない人なんて初めて会った。
「翠璃は中学校では首席だったのよ。卒業生総代に選ばれるのが嫌だったから、時々手を抜いたり学校を休んだりしていたけど」
 晶子さんが言う。

 どうやら私の周りにはすごい人たちが集まっているようだ。綺羅星のような秀才たちに囲まれていると自分の落ちこぼれぶりが空しくなってくる。
「とにかく高二の今が羽を伸ばして遊べる最後の時よね」
 その時、私の頭に一つ案が浮かんだ。
「私の入っている部活の部長が私たち部員を地元のスキー場に誘っているのよ。ねえ、もし良かったら氷室さんも来ない? 私、女一人で男子部員の中に混じるのは嫌なんだけどあなたが来てくれるなら行きたいわ」
 私は氷室さんに友達を増やす機会をあげたいのだ。傍らで晶子さんも「あら、いいじゃない」と言っている。
「あなたが入っている部活ってあのESS?」
「そうよ。一組のパターソン君が部長をやっているのよ。あの人、とても気さくな人よ」
 クリスと手島君だったら、はみ出し者の氷室さんを温かく受け入れてくれるはずだ。
「ああ、あのハーフの人ね。でも、一組の澁澤君も来るんじゃないの?」
「うーん、どうだろ。もしかしたら澁澤君も来るかもね」
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