【短編】とある悪い日の話
誰にでも言ってるに決まってる。
私だけじゃ、ない。知ってる。
分かってる、のに。
「うわ、火薬のにおい懐かしい!」
線香花火に火をつけた七咲の顔が、ぱっと照らされる。
「本当はでっかいやつもやりたいですけど深夜ですからね」
「……そうね」
私も七咲の正面にしゃがんで火をつける。
今日は、朝からついていない。
まさに踏んだり蹴ったりで、泣きっ面に蜂。
でも、終わりよければ全てよし。
相手が七咲っていうのが癪だけど、こういうのも悪くないかな、なんて。
「都和」
線香花火のパチパチと踊る火花を眺めていると、不意に名前を呼ばれて顔を上げる。
「誕生日、おめでとう」
……どうして。
「なんで、知って」
「好きな人の誕生日くらいリサーチ済みです」