愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「そうですね、秘書課も自分が希望していたところだったので、頑張らなきゃって思うんですけど、それが返って空回りしちゃう時があったりで……今回のタクシー手配ミスもそうです」

 自分のミスを思い出しただけでも気持ちが沈む、すると鷹野部長はゆっくりと首を振って言った。

「茜ちゃん、新人のうちにミスはどんどんしたほうがいい。失敗は成功の元って言うだろ?」

「そう、なんですけど……」

「けど、成功の元にするためには、その失敗をちゃんと自分のものにして生かさなきゃ、ただの失敗で終わってしまう」

 様々な仕事をやりこなしてきた鷹野部長の言葉だからこそ、私の胸にじわっと染み込んだ。

「困ったことがあったら、ひとりで抱え込まずに必ず誰かに相談するんだ。茜ちゃんの力になれることがあれば、なんでも言って欲しい」

「はい。ありがとうございます」

 そう言われると、頼もしくて、余裕のない気持ちも安らいでいく気がした。

「俺も新人の頃は我が強くてね、経験もないのに勢いだけで仕事をしようとして、何度も失敗しては先輩や上司にこっぴどく怒られたりしたよ」

 鷹野部長は恥ずかしそうに笑う。その笑顔が少しあどけなくて、ついずっと見ていたくなってしまう。
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