愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「もしもし? え? なんだって? うーん、それは困ったな……」

 仕事でなにかあったのか、鷹野部長は額に手をつけて小さく唸る。

「わかった。その報告書、一回見せてくれるか? 俺が確認して、間違いがあれば修正するように指示を出すから、あぁ、いいんだ、部下のミスは俺のミスでもあるからな。今からそっちに向かう」

 鷹野部長はさっと電話を切ると、「すまないね」と小さく笑った。

「あの、どうかしたんですか?」

「あぁ、急ぎで会社に戻らなきゃならなくなってしまって……こんな時に申し訳ない」

 時計を見ると二十一時を回っている。これから会社に戻って仕事となれば、帰りも遅くなってしまうに違いない。けれど、完全に仕事モードに入った鷹野部長は、先ほどまでのプライベートの柔らかな表情とは違って、隙を見せないキリっとしたビジネスマンの顔になっていた。

今まで仕事が忙しいと言っていたけれど、必要としている人のために仕事に打ち込む姿勢は凛々しく、思わず見惚れて尊敬してしまう。

 鷹野部長、かっこいいな――。
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