愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
 私は食堂に入った鷹野部長を目で追った。すると、顔の表情がなんとかわかるくらいの距離のところで、水菜さんとなにやら話し込んでいるのが見えた。

「おい、鈴本?」

 ぽかんとしている私の顔を見て、田辺君が言った。

「あれ? なにお前、もしかして知らないの?」

「え? な、なにが?」

 田辺君に声をかけられてハッとなった私は、慌てて平静を装う。

「鷹野部長がなんで実家の会社に入らなかったのかっていうのは、まぁ、人それぞれやりたいことがあると思うからわからないけど、なんでも許嫁と正式に婚約するために日本に戻ってきたって噂」

「え……?」

 許嫁って……もしかして私のこと――?

「でも、どうして田辺君が知ってるの?」

 私は動揺を隠しきれず、話に食いつくように尋ねた。

「まぁ、こう見えて俺、色んな情報網持ってるから」

 田辺君は親指を突き立てて、フフンと得意げに鼻を鳴らした。
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