愛しの許嫁~御曹司の花嫁になります~
「必要な資料をとりに来たら鈴本がいただけだ。鈴本、そのファイルを元にデータ作ったら一旦俺に回してくれ」
「あ、は、はい」
急に上司の顔に早変わりして、鷹野部長のそのギャップに狼狽える。とにかくここに水菜さんがいるのは気まずい。そう思って私はぺこりと頭を下げると、鷹野部長を横切ろうとした。
「さっきの約束だからな。十時に迎えに行く」
「っ――!?」
去り際、そう耳元に小声で囁かれて思わずビクッとなるのを慌ててこらえる。私を見る水菜さんの視線が冷たい。ファイルを抱え、足早に資料室を出ていこうとドアを閉めたその時だった。
「遼一、あの子はまだ新人なんだから、気安く手を出さないで」
「なぜ、それをお前に咎められなきゃならないんだ? まるで、俺が遊び人みたいな言い草だな」
な、なに……話してるの――?
「俺と鈴本のこと、何も知らないくせに口出ししないでくれるか?」
温和な鷹野部長からは想像もできないくらいの冷淡な口調に、私の身体がこわばる。
「だって、私と遼一は……」
これ以上ここにいちゃいけない――。
胸をえぐられるような言葉が飛び出すのを恐れて、私は踵を返すと資料室から走り去った。
「あ、は、はい」
急に上司の顔に早変わりして、鷹野部長のそのギャップに狼狽える。とにかくここに水菜さんがいるのは気まずい。そう思って私はぺこりと頭を下げると、鷹野部長を横切ろうとした。
「さっきの約束だからな。十時に迎えに行く」
「っ――!?」
去り際、そう耳元に小声で囁かれて思わずビクッとなるのを慌ててこらえる。私を見る水菜さんの視線が冷たい。ファイルを抱え、足早に資料室を出ていこうとドアを閉めたその時だった。
「遼一、あの子はまだ新人なんだから、気安く手を出さないで」
「なぜ、それをお前に咎められなきゃならないんだ? まるで、俺が遊び人みたいな言い草だな」
な、なに……話してるの――?
「俺と鈴本のこと、何も知らないくせに口出ししないでくれるか?」
温和な鷹野部長からは想像もできないくらいの冷淡な口調に、私の身体がこわばる。
「だって、私と遼一は……」
これ以上ここにいちゃいけない――。
胸をえぐられるような言葉が飛び出すのを恐れて、私は踵を返すと資料室から走り去った。