眠り姫の憂鬱
…頭ごなしに反対されているわけではないのだろうか…とすこしだけホッとする。

「もう、良いだろう。連れて帰るよ。退院したばかりなんだから…」
とショウゴさんは私の肩を抱き寄せ立ち上がる。私は何を言ったら良いのかわからなかったけど、

「…病院で目が覚めてショウゴさんに会った時、とてもドキドキしたんです。
恋人だと聞かされて、…嬉しかったです。
今までの事は思い出せないですが…一緒にいてほしいと思いました。
…こんな言い方しかできなくて申し訳ありません。」と深く頭を下げると、


「十分よね、あなた。とても誠実だと思うわ。」とお母さんがお父さんの顔を見た。

「はやく、好きになってやってくれ。」とお父さんが私の顔を見る。

私が赤くなって俯くと、

「大丈夫だよ。俺がそのぶん好きだから」とショウゴさんは私の手を引き、部屋を後にした。


車の中でショウゴさんは

「俺がいつまでも結婚する気がなかったから、あの人たち、本当は凄くうれしいんだよ。
美月が可愛いらしくて真面目なのもとても気に入ってたって中野さんも言ってたし…
ただ、事故の後で急に婚約者がいるって言ったから、驚いていただけ。
だから、これから安心して俺を好きになってよ。」と微笑んで私の頬を指でそっと撫でる。

「事故の時…とても心配させたんですね。
ごめんなさい。」と私もショウゴさんの頬に手を当てると、

「…美月のせいじゃない。でも、もう、離れたくない。」と私を深く抱きしめた。


ショウゴさんの腕の中はとても安心していられるとそう思いながら目を閉じた。
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