天使の傷跡
「あの…ごめんなさい…」
悪気は全くなかったのだが、課長を怒らせてしまったことに変わりはない。
「あっ…違う! そうじゃない、水谷は何も悪くないんだ!」
シュンと肩を落とすと、ハッとした課長が慌てて私の肩に手を置いた。
「悪い。お前の性格を考えればそうすることはわかってたのに、最初から時間を指定して迎えに行かなかった俺の落ち度だ。本当に悪かった」
心底申し訳なさそうにそう言うと、こともあろうに課長が目の前で頭を下げた。
「えっ…ちょっ、課長っ?! 顔を上げてください! あの、言われた通りにしなかった私が悪いんですし、課長が謝る事なんて何もないですから!」
目の前で起こったことが信じられずに、今度は私が必死で課長の肩を揺り起こす。
自分でここまで来ただけでこんなことになるだなんて、まさか考えだにしなかった。
「…ほんとに悪かった」
「いえ、ですから…」
顔を上げてくれたはいいものの、相変わらず課長は酷く落ち込んでいる。
どうしてそこまで気に病むのか、私には全く理解できなかった。