天使の傷跡
「…悪い。せっかく来てくれたのに早々に気分悪くさせたな。……入ってくれるか?」
こちらの様子を恐る恐る伺う様は、あれだけ強引に来い来いと言っていた人とはまるで別人だった。
その姿はさながらご主人様のゴーサインを待つ大型犬のようだ。
「…ぷっ」
だから思わず笑ってしまったのは不可抗力だと思う。
「……笑うなよ」
「す、すみませんっ、だって…!」
だめだ、もう我慢できない。
本格的に体を震わせ始めた私に、課長はバツが悪そうに頭を掻いた。
「あーもう、初っ端からかっこ悪すぎだろって…。とにかくいいから、入るぞ!」
「わわっ?!!!」
いつまでも笑い終わらない私に痺れを切らしたように、課長は私の手を掴んでグイグイと家の中へと入っていった。