天使の傷跡

課長が半年前に瀕死の状態だったところを助けたという茶トラの猫は、足に障害を残してしまったものの、今はこうして彼の家族の一員として幸せそうに暮らしている。

これからたくさんの幸せが訪れるようにという願いを込めて、福助と名付けたそうだ。

「__あっ! そう言えば福助にお土産を持って来たんです!」

「え?」

思い出した様に手に持っていたエコバッグの中から猫の餌をいくつも取り出す。
あまりにも次々と出てくるそれらに、課長が驚くというよりはむしろ呆れていた。

「どれが食べられるかわからないから…とりあえず適当なものを買ってきたんですけど、もしいらないものがあったら言ってくださいね! 私持って帰るので」

「…お前って猫好きだったんだな」

そう言われてはたと考える。

「…いえ? 多分、普通…でした」

「でした?」

「もちろん嫌いじゃないですけど、特別好きってほどでも…。でも何故だか福助は気になって気になって仕方がなくて」
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