チェックメイト
「おお、成程。よく分かんないけど。」

「…何ですかソレ。」

恥ずかしさを誤魔化すように非難してみたけど内心は心臓がバクバクしていた。

腕が触れあう程こんなに近くに並ぶなんて教育係の時以来の様な気がする。

「さっきも思ったけど…小林は花が良く似合うな。」

耳に入ってきた言葉が信じられなくて私は目を大きくしたまま何も返すことが出来なかった。

絶対顔が真っ赤になってるに違いない、先輩ってこんなこと言う様な人だったっけ。

動揺しすぎて先輩の顔なんか見られない。

「全問正解してブーケにしようぜ。せっかく綺麗な格好してるんだしな。」

スクリーンに映された問題を司会者が読み上げまたクイズが始まる。

先輩は気付いているのかな。

それとも無意識なのかな。

移動するたびに私の肩を抱いていくのは会場が混雑しているからなのかな。

「せ、先輩。」

近すぎる、そう訴えたくて歩く時に呼びかけても答えてはくれない。

答えを待つ間は離されるけど動く時は当然のように肩を抱かれてクイズは進んでいった。

正解を重ねて腕の中は既にブーケの様に賑わっている。

全問正解のペアがいくつかあったけど全ペアに有名ホテルの食事券が渡された。

「やることが違うな、さすが社長様。」

「そうですね…。かなりビックリです。」

花と引き換えに渡された封筒を見つめて私たちはただただ感心の声をもらした。

一体いくつ用意していたんだろう、まさか全ペア用意していたんじゃないかと疑うくらいに配られたのだ。

やっぱり世界が違う。

というか、これどうしよう。

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