チェックメイト
そのキラキラした目に捕らわれたら二度と抜け出せないような気がする。

「僕は新井俊哉。トシくんて呼んでよ。」

「新井さん。」

「構えるね~。きみは一樹の後輩でしょ?小林亜弥ちゃん。で、きみが凜ちゃん。」

名前を当てられて一瞬目を丸くするけど、すぐにその理由が分かって私たちは目を細めた。

会話から分かったんだ。

聞こえてきただけかもしれないけど、しっかりと内容を頭の中に入れたことが感じ取れて少し嫌な感じになる。

この人、軽い。

凜はこういうタイプは嫌いなんだけどな、そう思って横目で見たら既に顔の向きを新井さんから外していた。

完全に視界から排除したらしい。

「トシ。あんまりこいつに絡むなよ?」

ため息混じりの声に振り向くと呆れ顔の先輩がいた。

「変な友人がいるって会社でばらまかれたら俺の株が下がる。」

「そんなこと言いふらしませんよ!」

「お前はうっかりミスが多いから信用出来ない。」

「うっ。」

それを言われたら何も返せない。

「変な友人って何だよ、一樹。」

「軟派野郎に絡まれたとかな。」

「は?軟派?」

先輩の登場で私も凜も二人の方を向いていたけど、新井さんと目が合うなり逸らして前を向いた。

「あれ?僕失敗しちゃった?」

本気で狼狽える新井さんを横目に最後の受付であろう参列者を迎えて私と凜は笑顔を作った。

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