俺はお前がいいんだよ

亀田さんと桶川さんは、何やら言い合いながら小突き合いを始めていた。
この会社は、ホント社員同士が仲いいなぁ、なんて、呆けてじゃれ合うふたりを見ていたら、受付にポンとなにかが置かれた。


「おはよう」

「社長! おはようございます」


正真正銘のイケメン・深山社長の登場に、私の声が色めき立つ。社長は黙っていれば怖そうにも見えるけれど、会社では基本愛想がよく、気配りに長けている。
なにせこんな私を雇ってくれた大恩人だもの。社長にはできるだけ低姿勢で対応するよ!


「これ、出張土産だ。みんなに出してやって」

「わーい。ありがとうございます」


この紙袋は仙台の有名菓子店のやつだ。ふっくらした生地の洋風まんじゅうを思い出してよだれが出そうになる。


「それと、……桶川のことで困ったらいつでも相談して」

「いつも困ってますけど、桶川さんになら自分で言えるから大丈夫です」


そう。彼のいいところは一緒にいて気後れしないところだ。
あんなイケメンと話すなんて……と気が引けてもいいところなんだけど、あの変人感がいいほうに作用している。


「そう? じゃあ頼むよ。君が来てから、俺としてはやりやすくなって助かってるから」

「そうですか? 頑張りますねー!」

「ああ」


社長は気さくだ。話しやすい。これは、この会社のいいところだよなぁ。


「おい、高井戸。外出するからついてこい」


そして相変わらずの傍若無人ぶりを発揮する桶川さん。


「はーい。社長から頂いたお菓子、配っちゃってからでいいですかね。はい、桶川さんの分」

「……早くしろよ」


大きな手にポンと乗せて私は他の人にも配り始める。外出している人の分は机の上に。みんなが「ありがとう」と笑ってくれるので、私が買ってきたわけでもないのにいい気分。

< 11 / 59 >

この作品をシェア

pagetop