俺はお前がいいんだよ

「はっきりと聞いてない」

「そんなの聞かなくたって分かるでしょ?」


「分からねぇよ! 俺はな、どんな奴の経歴だって調べようと思えば調べられるけどな。人の心の中まで読めるわけじゃない」

「読まなくたってわかるでしょう? これだけ構われて、好きにならないわけないじゃないですか!」


今更何を言っているのだ。
好きな人じゃなきゃこんな風にしがみついたりしないっての。


「じゃあちゃんと言ってみろ」


ほっぺを両側からぎゅーっと押さえられる。
痛くて目を瞑って、そうして開けたら、まぶしいぐらいのイケメン顔が優しく私を見下ろしている。


「顔見て言うのはハードルが高いです」

「は? 甘えんな。目をそらした告白とか認めねぇからな」

「もう! 告白なんてされなれてるでしょう? 私の気持ち伝わってるならもういいじゃないですか」

「嫌だ」


桶川さんの顔が近づいてくる。ほっぺはしっかり押さえられて、目をそらそうにも視界のどこを見ても桶川さんが入ってしまう。


「好きな女からの告白ってのは、慣れてない」

「は?」

「なんとも思ってない女からなら慣れてる」


さり気にモテ発言をしたな。この人。


「……お前からの告白なら、なんど聞いても聞き足りない」


蕩けてしまいそうなほどの甘いマスクで、熱っぽいまなざしを向けられて、陥落しない女がいたら見てみたい。
豆狸は、もう降参です。

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