俺はお前がいいんだよ

桶川さんはデスクに鞄を置くと、私が置いた書類をパラパラと確認した。


「お、早いな。本当にできてる」

「情報収集は得意ですから」

「お前、探偵にでもなればよかったんじゃないの」

「雇ってくれるんならそれもありだったんですけど」

「でも高井戸じゃ威圧感ねぇからダメだな。みんな見くびるに決まってる」


気にしているところを言われて、「だからこそ潜入捜査ができるかもですよ」と、私は桶川さんに言い返す。

でも彼はちらりと私を見て、鼻で笑う。
ああ、小者が突っかかって来たなとでも思っているのだろう。

まあいいけどね。その通りだし。
私は残念ながら身長が百五十五センチと低く、童顔だ。私服で外を歩くと今でも高校生に間違えられることがある。

運動神経はそう悪くもなく、高校時代のバスケ部では小回りの利いた動きには定評があった。まあでもひとりとびぬけて低い身長はどうにもならなかった。ずっと補欠。ひどい時には補欠にすら入れなかった。結局半分マネージャーのように、相手の選手の情報を得ることに躍起になっていた。

そこで培われた調査能力に加え、最初に勤めた会社での営業事務の経験から、ビジネスソフトのスキルや議事録作成スキルなどを身に着けた私。自分で言うのもなんだけど、結構有能だったと思う。私の作る資料には見やすさに定評があったし、営業部内の融和にも努めていたはずなのだから。

なのになぜ転職したのか。

それはある出来事がきっかけだ。
人間関係が駄目になると、いくら仕事ができたって会社にいるのが苦しくなる。


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