俺はお前がいいんだよ
そうなのだ。
告白し合ったのだから一応私たちは恋人同士になったわけだし、大人同士なんだからさっさとキス以上の行為に及んでもいいのだけれど、なんというか、一緒にいると桶川さんの凄さが目について、むしろ私の心は引いていくわけ。
桶川さんは雰囲気を出してくるけど、ことごとく私がその雰囲気をぶち壊し、今のところ健全な同居生活を送っている。とはいえ、のらりくらりごまかすのもそろそろ限界だ。私は、結論を出さなきゃならない。
「……嫌なんですよ。絶対幻滅されるの目に見えてるもん」
「そのうっすい胸にか? そんなもん、服の上から見ても分かるぞ」
あろうことか、服の首繰りに指を引っかけ覗きやがった。
私は声にならない声をあげ、桶川さんの頭を必死に押しのける。
「なにすんですか、このエロ魔神」
「おまえ……、俺にこの一週間我慢させまくったくせに何偉そうに言ってんだよ」
言い合いは得意な私たち。今日もそんな色気のない言い合いで夜は更けていく。
「大体さ、中身見て幻滅するようなら最初から惚れねぇだろ」
「そうでもないんですよ。私、男運悪いんです。今まで付き合った人、みんな私の外見で勘違いして」
「俺がその阿呆たちと同じだっていうのかよ」
「そうじゃありませんけどっ。でも私みたいな豆狸には格上すぎてドン引きです」
「またその豆狸って言う。なんでお前、そんなに自分を小狸扱いするわけ?」
「豆狸って小狸って意味じゃないですよ?」
「違うのか?」
「ええ」