俺はお前がいいんだよ

私としても、結果的に給料が上がって万々歳だった。

若干残業が多いのが気になるけれど、目の保養ともいうべきイケメンがいっぱいいるからそれはそれでオッケー。
どうせ彼氏が待ってるとかいうこともないしね。

一応、私の職種は受付事務となり、受付スペースに陣取ってはいるけれど、この会社の仕事は主に客先に出向くほうが多く、来客はほぼ来ない。要件は電話かメールが主だ。
結果として、実際に受付の仕事はほとんどなく、私は毎日桶川さんに顎で使われている状態だ。

そして、来客が少ない故に、社内の雰囲気は緩い。緩すぎなほどだ。


「……桶川さん、重い!」


受付デスクに腰を預けつつ、座っている私の頭に片肘をついて、桶川さんが先ほど渡した資料を眺めている。


「悪い悪い、ちょうどいい位置にあったもんで」

「これ以上身長縮んだらどうするんですか」

「上半身だけ縮めば、足長くなって見えていいんじゃね?」

「いーやーです!」


何が面白いのか知らないけれど、桶川さんは私をからかうのが楽しいらしい。

そこはムカつくけど、この職場での仕事は私にとっても楽しい。
社員は男性が多いけれど、今のところ粘着質な人はいないし、みんな顔も性格もいいのできっと彼女とかもいるのだろう。常識的な範囲で仲良くしてくれる。

ストーカーに悩まされていた私にとって、あっさりとした人間関係ほど心を落ち着かせてくれるものはない。
まあ、桶川さんはちょっと馴れ馴れしいけどね。


「……うん、良く調べてある。お前有能だな」

「あったり前じゃないですかー」

「これならどこにでも行けただろう。あの時、なんでうちの社長に声かけたんだ?」


本気そうに問いかけられて、私はきょとんとしてしまう。
転職なんてそんな簡単じゃないし、私があの時社長に声をかけたのは、精神的に切羽詰まっていたからだからね?
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