プレシャス~社長と偽りの蜜月~
バスルームで愛され、その後もベットの上で愛され続け、カラダは既に彼の欲望に悲鳴を上げていた。
でも、逃れられず、抗えず、何度も脳裏を真っ白にさせた。

彼は公言通り、人には見えない場所にキスマークを押し付ける。


「こんなにも朱音を抱いたのは初めてだ・・・」

「理系男子のクセに…タフなのね。雅人」

「そう?」

記憶を失った私に雅人は沢山お話をしてくれた。かって自分が私の執事だった話も・・・

今、記憶の中に刷り込まれている記憶は全て雅人の話。

父の会社のコトも全部、雅人の口から訊いた。


何も憶えていない私にとって彼は自分の取り巻かれた世界を知る媒体なのだ。


理系の国立大大学院を卒業した雅人は社長に就任するまでは白衣を着て、新薬の開発に従事する研究職だった。

職人気質の社員が多い父の会社を吸収し、新会社を設立してその社長の椅子に座る雅人であったが、元は研究職の彼の経営手腕に不安を抱く者が多いと言う。

彼も人伝でそんな言葉を耳にし、悩んでいると私に吐露した。そうやって自分の悩みを打ち明けてくれる彼。
これからは彼の妻として支えて行こうと思う。
でも、この先カラダが持つか私にとっては悩みの種だった。




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