プレシャス～社長と偽りの蜜月～
事故で脳に傷を負った場合、その傷が完治すれば失った記憶も改善するコトがあると伊集院先生は最初に説明してくれたが、私の記憶は全く戻らなかった。


「でも、薬に頼ってもね・・・戻る確率は低いと思うよ」

精神的な病を患い記憶喪失を起こしているなら、色んな薬の種類があり、催眠療法と言う治療方法も選択できるが。
私は事故が原因。

私にはこれと言った治療方法がないのが現実。


「日常生活に支障はないんでしょ？」

「ありませんけど・・・交友関係や母から昔話をされると困ると言うか・・・」


「相良社長はどう言ってるの？」

「このままでいいと」

雅人は未来を見て行こうと過去にはこだわらない雰囲気を見せている。

全ては生まれる子供の為だと思う。
私と言えば、仁志の死を思うと生きているコトに後ろめたさがあるが、子供のコトを思うと雅人と同じキモチになった。



「今を歩いて行く。子供の為にもそれがいいと思うよ」

私は伊集院先生に諭され、診察を終えた。


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