プレシャス~社長と偽りの蜜月~
1階の待合のソファに座っていると樹彦が歩み寄って来た。


「今日は診察の日か?朱音」

「樹彦・・・診察を終えて会計を待ってる所。貴方は仕事?」

「そうだよ。医療器具の納品に向かう所だ」

樹彦は脇に社名入りの箱を抱えていた。

「納品は直ぐに終わるからメシ食おうぜ」

「えっ!?」

「待ってろ」

私の都合も訊かずさっさとエレベーターホールへと歩いて行った。

強引な従兄弟。

会社での雅人の様子も訊きたいし、いいかと思って、会計が終えても樹彦を待った。


「待たせたな」

「いいのよ」

私は腰を上げて樹彦と病院の外に出た。

「病院近くにうな重の美味い店があるんだ」

「うな重・・・今の私はもっと軽い物が食べたい」

「仕方がない。妊婦のお前に合わせてやるよ」




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