恋の人、愛の人。
「アイスは一番後ですね。あの、お味噌汁、作ってくれますか?」

「うん、いいわよ」

「やった。この前みたいに具だくさんで」

「はいはい」

一通り回って買いたい物はカートのかごに入れた。カートを押していると重さが解らないから、いつもだと手に持って買うんだけど。かごを持つと言っていた黒埼君が、そのうち、重いですといい始め、取りに行った。
レジを済ませ袋に入れ、重いと思われる方を黒埼君に持って貰って帰った。


「これは中々に重い。こうして歩いてるとじわじわ買い物の大変さが解りますよ」

「大丈夫?」

「大丈夫ですよ。言っても5キロもないでしょ。今日のは、ほぼ飲み物の重さですから」

「そうね。黒埼君も手伝う?それとも、でんと構えて、一人、晩酌でも先にしとく?」

「……晩酌か…どっちもしてみたいなぁ…」

「え?」

「偉そうに、梨薫、何か摘まみを作ってくれないか、とか、言ってみたいし…、一緒に邪魔扱いされながら料理もしたいし」

「フ…とんだ妄想ね」

「妄想なら、もっと先の妄想までいつも発展してますから」

「…はいはい。それは言わなくていいから」

「解ってくれてるんですか?じゃあ言いませんよ、恥ずかしいから」

「…何…そんな、口にも出せないような事なの?」

「はい、…こんな、外では…。あんな事や…こんな事ですから…もう梨薫さんが凄くて…」

「止めて、ストップ!…はぁ…もう、一人で帰って貰おうかな…。外ですら危険を感じる。ていうか、どんな想像をしてるの…変態?」

「そんなぁ、ノーマルですよノーマル。…所詮、実現できない妄想じゃないですか…」

「フ。冗談に決まってるでしょ?そっちだってからかい半分のくせに」

「別にからかってはないですから。…あわよくばって、そこは思ってますよ?いつだって、調子いい事言ってたって、根底は真剣なんですから、そこはふざけてなんかないですから」

「はい、解りました。はぁ、重い…着いたわね」

マンションを見上げた。

「…着いちゃいましたね」

…うん…着いた…。
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