恋の人、愛の人。
「珈琲入れて、スイーツを食べましょうか」

「…ゔ〜ん。まだスイーツは無理かも知れないから私は珈琲だけにするかな…。黒埼君は食べて?無理にとは言わないけど」

「お湯沸かします。珈琲入れてる辺りで食べたくなったら食べますよ」

「うん」

「あの…梨薫さん」

いつまで可愛く、くっついてくれてるつもりだろう。カップを出すからと言ってしまったら離れてしまうだろうし。

「カップ出すね」

あっ。…だ、は、くそ…言うより先に簡単に離れてしまった。

仕方なく俺はお湯を沸かした。
お湯なんて直ぐに沸く。
はい、と珈琲の粉を入れた、目の前に置かれたそのカップに、沸いたお湯を注いだ。
それぞれカップを持ち移動した。

…さっきのは、お返しだって言ったよな…。
特に何か、今あるって事じゃないって事か…。そうだよ、何もありはしない…。驚かすだけ驚かせて、……結果、期待させて。

「あ、俺、ティラミス食べます、頂きますよ」

「うん、食べて食べて」

何だか本当、自分ちって感じがして…冷蔵庫を開けティラミスを取り出し戻った。

ソファーの方には行けず、またキッチンの椅子に腰掛けた。俺が妙に意識してしまったんだ。

「黒埼君~、明日はどうするの?変な聞き方だけど、何時にいなくなっちゃうの?
私、明日は…多分、帰って来るのは早くて夕方くらいだと思うから。上手く言えないけど、好きな時間まで居てくれていいから、慌てなくていいって言いたかったんだけど、変に聞こえなかった?」

「大丈夫です。ゆっくり慌てず…退散させて頂きますから」

「うん。あ、鍵は会社で返してくれていいからね」

「解りました」

…やっぱり、そろそろ帰るつもりだろうか、だからこの話になったのだろう。

「黒埼君…また上手く話せるか解らないけど…」

「はい」
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