恋の人、愛の人。
「眠くなって来たら寝て…、起きたら朝ご飯、一緒に食べようか。
こんな感じだとお昼ご飯になってるかも知れないね」
…。
「…そうですね、眠れてしまったら起きられなくなりそうです」
俺はこのまま起きているだろう。多分、映画の影響が無くても眠れない。まさか梨薫さんが居る事になるとは思わなかったからだ。
そりゃあやっぱり居て欲しいとは思ったけど、居ない事で切り替えられていたモノが、また切り替えられなくなってしまったからだ。
こんなのが、一番どうしようもなくて…やり切れない状況だ。はぁ。
珈琲のカフェインだって関係無い。興奮が冷めやらず、だ。
眠れるものではない…。
「じゃあ、私、あっちに行くね」
一緒に居られる雰囲気でも無いと思ったのだろう。気まずいのは俺も気まずい。このもどかしいアンバランスが…はぁ、…辛い。
「はい…おやすみなさい」
「うん…、おやすみ」
キッチンでカップを洗うとベッドルームに行ってしまった。
…はぁぁ、これで朝まで会わない…か。
映画は全体にほぼサスペンスとミステリーではあったが、僅かにあったラブの部分。それはとても…現実ではあってはならない事でもあり、切ない部分でもあった。
刑事と犯人…。事件解明と供に、近づいていくにつれ歯止めが利かない…惹かれ合ってしまった。激情だよな…一度だけの情事。
そんな激しく濃いシーンがあった。
駄目だと解っているっていうのがあるからこその止められない激しい気持ちだ。
男と女の刹那だ…。
俺はその気持ちに心臓が強く拍動した。